自分という病

主に映画の感想 たまに変なことも書きます。あらすじは長いです。

映画感想 ヒドゥン

『ヒドゥン』(原題:The Hidden)

1987年 96分 アメリ

評価 7点/10点満点中

 

 

人類が地球外の知的生命体と接触できるのはいつになるだろうか。あまりにも宇宙が空間的に広く、人類の種の寿命は時間的に短いので、ファースト・コンタクトは起こらないだろうという説もある。

しかし考えてみれば、恒星間を飛行して地球に来訪できるレベルの文明であれば、人類に存在を感知されずに人類社会に紛れることも可能ではないだろうか。もしかすると、あなたの隣人が宇宙人かもしれないし、あなたが宇宙人かもしれない。こういうのは愉快なSFであり陰謀論だ。

本作『ヒドゥン』は、人間に寄生するエイリアンとそれを追う刑事とFBIを描いたSFアクション。ある男が凶悪犯罪を起こす。刑事のベックは男を捕まえるが、男は瀕死の重傷を負う。事件は終わったと思ったベックのもとに、FBI捜査官を名乗るロイドが現れる。平たく言えば『メン・イン・ブラック』である。

車やセットを壊しまくる泥臭いが派手なアクションが面白い。冒頭からカーチェイスで飛ばしまくりだ。謎のFBI捜査官ロイドのキャラも良い。ただ、ストーリーに関しては凡庸。それでも全体的には最後まで惹きつける魅力がある。ラストに関しては、、、謎が残るだろう。

 

 

 

 

あらすじ(ネタバレなし)

ロサンゼルスのある銀行で、ひとりの男が銃を手に銀行を襲う。男は警備員を何人も撃ち殺すと、奪った金とともに車で逃亡、警察とのカーチェイスを始める。ロス市警のベックはパトカーでバリケードを作り、怯むことなく突っ込んできた男の車に銃弾を浴びせる。パトカーにぶつかった車はとまり、男が車からゆっくりと出てくる。警官たちは車に銃撃を浴びせ、車は爆発。男は半死半生の状態で病院に運ばれる。医師によると、男は今夜を越せないとのこと。同じ頃、FBIのロイドは、強盗犯となった男の足取りを追って、男の隣人を訪ねている。男の名前はジャック・デフリースで、紳士的な人物だがここ最近は見かけないと言う。そのとき、ジャックが現れたという情報がはいり、ロイドはロス市警へと向かう。

警察署に戻ったベックに、上司の警部補がロイドを紹介し、彼をパートナーとして捜査にあたるように命令する。ロイドがジャックの写真を見せると、その事件は終わっているとベックは言う。

ベッドに寝ているジャックの口から虫のような生き物が這い出し、となりのベッドに寝ていたミラーという男の口に入る。異常に気が付いた医師がやってきて、ジャックの死亡の確認とミラーの心肺蘇生を試みる。電気ショックによりミラーの心拍は異常なまでに動き出し、目を覚ましたミラーはどこかへ去る。

ロイドの車で病院へ向かうことになったベック。ロイドのポルシェを見て、ベックは盗んできたのかと冗談を飛ばす。ロイドはそうだ、と答える。ロイドにジャックの状態を話すと、ロイドは車の速度をあげる。二人が病院に着いたときには、すでにミラーは消えている。

レコード店にやってきたミラーは店員を殺して大量のカセットテープを奪う。

人に乗り移り凶行を繰り返す謎の生き物。それを追う謎のFBI捜査官ロイド。ベックは不可解な事件に戸惑いながらも、警察官として事件に挑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

エイリアンは高級車がお好き

初っ端から派手なカーチェイスを始める本作。エイリアンは人間に乗り移っては高級車を盗む。最初に登場した車はフェラーリで、ミラーの姿になってから盗んだのもフェラーリだった。同じくエイリアンであるロイドもポルシェに乗っていたので、どうやら彼らの性分らしい。エイリアンの星でも高級車がステータスだったのだろうか。それとも高級UFO? 面白い設定なのだが、これといった理由が説明されないのは残念。適当でも、スピードを出せるのがいいとか、運転が楽しいとか、それなりの言及があってもよかったと思う。ともかく最後まで、エイリアンが車好きな理由が謎でもやもやとしてしまう。メタ的な理由は、カーチェイスに高級車を出したかったからだろう。

車の好みだけでなく、エイリアンは謎が多い。彼らがどこからやってきたかはもちろんのこと、どれくらいの文明をもっているのかもわからない。すくなくとも、地球にやってこられる航行能力はあるのだろう。

やはり、ロイドの中身もエイリアンと同じく気持ち悪い虫なのだろうか。たぶんそうなのだろう。ラストではキラキラしたものにぼかされていたが、あそこでロイドの口から虫がでてきてベックの中に入ったらそれこそホラーだ。

エイリアンはロックが好きだったようだが、ロイドはとくにそういった描写は見られなかった。ロックが好きなのはエイリアン個人の好みだろう。そうすると、ますます車好きな理由がわからない。制作という神の都合でしかないのだろうか。

アクションは個人的には好きなのだが、最初のカーチェイスが一番派手だったのは残念だ。とくに終盤はアクション面はしぼんでいく。最終決戦はもっとド派手にやってもよかっただろう。

エイリアンにとりつかれた人間が銃弾を受けても倒れずに人々に迫るところは、のちの『ターミネーター2』におけるT-1000の描写に影響を与えているかもしれない。『メン・イン・ブラック』が本作の影響を受けているのは、ほとんど確実だと思う。『メン・イン・ブラック』でJが使う小さな銃は、ロイドのレーザー銃を彷彿とさせる。

 

口移しエイリアン

本作のストーリーには特筆すべきところがない。ロイドが宇宙人だということも、わりと早い段階で気が付くだろう。作品自体が次の展開が予想しやすいように作られているようにも思う。とくに難しく考える必要のない娯楽映画としてわりきっているのか、脚本や演出の力不足かは不明だ。宇宙人の設定と同じく、制作側に深く作り上げる気はなかったのかもしれない。

気になるのはラストだろう。瀕死のベックを助けるために、ロイドは口からピンク色のキラキラしたもの(おそらく吐しゃ物ではない)を出してベックに注ぐ。おっさんの口にピンクのオーラが注がれる絵はなかなかシュールだ。

問題はそのあと。ベックの家族や医師たちが病室にはいってくると、そこには倒れたロイドの姿がある。ベックは目を覚まして妻を抱きしめると、娘にもおいでと手招きをする。しかし娘は戸惑ったように硬直し、何度も促されてようやく父のそばへと行く。自分はロイドが与えたのは生命力的なサムシングだと思っていたのだが、この娘の反応を見るに、ロイドの中身がベックに入り込んだのではないのかと思う。娘はロイドが家に来たとき、彼の中身を見透かしたかのように見つめていた。あのピンク色はエイリアンを綺麗に描写した結果なのだろう。

よくわからないのが、どうして最後の最後で『スキャナーズ』みたいなことをしたのかだ。これに関してはモヤモヤが残るし、本物のベックが死んでしまったとなればカタルシスも感じられない。盛りそば食べてたら最後の一本がスパゲティだったみたいな肩透かしを食らう。素直にベックが生き返ったでよかっただろう。この最後については、かえって楽しめるという人もいるだろう。

 

まとめ

メン・イン・ブラック』にも影響を与えているだろう本作。ストーリーや設定に瑕瑾は見られるものの、アクション映画としては十分に面白いといえる。見ても損はない。