自分という病

主に映画の感想 たまに変なことも書きます。あらすじは長いです。

映画感想 フィフス・ウェイブ

『フィフス・ウェイブ』(原題:The 5th Wave)

 2016年 112分 アメリ

 評価 2点/10点満点中

 

 

幼年期の終わり』に『インデペンデンス・デイ』と、宇宙人が地球にやってくるSF作品は枚挙に暇がないが、一番多いのは侵略ものだろう。本作『フィフス・ウェイブ』も宇宙人の侵略を描いたSF映画で、原作はアメリカのヤングアダルト小説。

突如現れた宇宙船によって引き起こされる「ウェーブ」と呼ばれる大災害と、それに立ち向かう少女が主人公だ。

ティーン向けの小説が原作だからというのもあるが、話の展開がご都合主義で既視感があるオリジナリティがないもので、大きな見せ場もなく終わる。続編を見越しての終わりだろうが、次回作の動きはほとんど見られない。一応、本作がヒットを出せば次回作が作られるらしいが。

 

 

 

あらすじ(ネタバレなし)

高校生のキャシーはアサルトライフルを抱えて、荒廃したガソリンスタンドに入る。中で残っているものを物色していたキャシーが物音を聞いて奥に進むと、腹部を押さえて倒れている男を見つける。互いに銃を向ける二人だが、男のほうが折れて銃を下ろし、腹を怪我している主張する。キャシーはジャケットの下に隠れた手を出すように要求する。男が手を出そうとすると、服の隙間から光るものが見え、キャシーは反射的に銃を撃ってしまう。十字架が、死んだ男の手の上で光る。

キャシーは同級生のベンに恋心を抱くも彼とうまく話すことができず、部活のサッカーに打ち込む平凡な日々を過ごしている。だが、地球上に突如として巨大な飛行物体が襲来。「アザーズ」と名付けられた彼らは沈黙を守り、人々はパニックに陥る。

疎開などで学校に通う生徒もまばらになり始めたとき、「アザーズ」は第一の「ウェイブ」として電子パルス攻撃を行い、人類の電子機器はすべて使えなくなる。本格的に混乱する人類に追い打ちをかけるように、第二の「ウェイブ」として大地震が発生。沿岸部や島は津波に沈む。さらに第三の「ウェイブ」として、鳥インフルエンザの変異体がばら撒かれ、人類の多くが死滅し、キャシーも母を失う。

父とのサムとともに家を出たキャシーは、生き残りの人々が作った森の中のキャンプにたどり着く。そこでいくらか落ち着いた時間を過ごしたキャシーたちだが、突如としてアメリカ陸軍が現れて、彼らを保護すると宣言する。

安堵と喜びに包まれるキャンプだが、なぜか子どもと大人に分けられて、子どもだけが先に軍の基地へと運ばれることになる。父は三人で一緒にいたいと申し出たが、軍の指揮をとるヴォ—シュ大佐に説得され、キャシーたちだけをバスに乗せる。くまのぬいぐるみを忘れたとサムが言うので、ぬいぐるみを取りにキャシーは一度バスを降りる。その間にバスは発車してしまい、キャシーはキャンプに取り残される。

キャンプの食堂では、集められた大人たちに向けて説明会が行われる。「アザーズ」たちは第四の「ウェイブ」として、人間に寄生し、人々に紛れているのだという。アザーズかどうかの検査は、子どもは簡単に行えるが、大人は複雑で時間がかかり、そのために子どもたちと分けたのだと説明される。食堂に入ろうとしたキャシーだが、周囲の不穏な空気を察した父は、手ぶりで近づかないように指示する。子どもたちと引き離されたことに抗議がはいったことを皮切りに、住民と軍が銃を向け合う。ついには発砲にまでいたり、キャシーは急いで身を隠す。銃声が鳴りやむと軍人たちが食堂から出てきて車に乗り去っていく。食堂に入ったキャシーは、人々に重なって死ぬ父を見つけ涙する。死んだ軍人からアサルトライフルを取ったキャシーは、サムと再会するために軍の基地を目指す。その途中、彼女はエヴァンという不思議な青年に出会う。生き残っていたベンは、軍の施設で「アザーズ」と戦うための兵士になる訓練を受ける。

果たしてキャシーはサムを見つけられるのか? そしてまだ見ぬ「フィフス・ウェイブ」とは?

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

急がば回り過ぎる宇宙人たち

本作の特徴は題名の通り、宇宙人たちの攻撃である「ウェイブ」、、、ではなく、主人公のキャシーと実はアザーズであるエヴァンの恋愛模様、、、でもなく、すべての要素が中途半端だ。シリーズ物にするのが前提だったからか、もとがヤングアダルト小説だからなのか。ともかくあらゆるところが中途半端なのだ。

本作の特徴である「ウェイブ」だが、1から3まではウェイブにふさわしい世界規模の攻撃なくせに、4つ目からは人類に寄生するという地味なもの。そのうえタイトルにもなっている5つ目のウェイブにいたっては、捕らえた子どもたちを騙して兵士とし、人間の生き残りを攻撃させるという。

回りくどいよ! 

とても回りくどい。アザーズに寄生されているという人々との戦闘中、この違和感にベンの戦友のリンガーが気がつく。

「電磁パルスを使う敵がガキに負ける?」

視聴者がずっと気になっていたことにようやくツッコミがはいる。

そもそもの話、ベンが見せられた人間に寄生したアザーズも、まるでPS2のCGのようなクオリティだから、視聴者にはこれが本当にアザーズなのかと疑問がでる。

リンガーが言うように、天変地異を起こすような奴らが、わざわざ人間に寄生するのかという点が気になる。

そして、リンガーのセリフから、ベンが導いた「フィフス・ウェイブ」の答えは、

アザーズ」が子どもたちを捕らえて兵士とし、残った人間たちを殲滅させる

というもの。

第4のウェイブより回りくどいじゃねーか! 

なんというかもう残念である。長い宇宙を旅してきて、天変地異を引き起こすことができるテクノロジーをもつ者たちの取る行動としては、あきらかに非効率だし現実味がない。いくらヤングアダルト小説だからといって、SFとしてはあまりにもお粗末だ。

さらに、アザーズたちに徴兵された子どもたちは、弟のサムをはじめとして、10歳にも満たない子どもが実践投入されるのだが、あまりにも幼すぎる。アザーズの侵略者としての浅さが感じられる。

そしてこういうツッコミどころが、ほかの部分にも散見される。

 

愛は偉大だよね

本作のもう一つの要素。それはキャシーが出会った謎の青年であるエヴァン。実はアザーズは昔から着々と侵略の準備を進めていた。アザーズは人間の体に入り込み、本体がやってきたときに地上から侵略を開始する。

エヴァンもそのうちの一人で、人間たちに攻撃を加えていたのだが、あることがきっかけで人間の味方になることを決める。

そのきっかけがキャシーに対する一目惚れだ。

なんでやねん。

キャシーに一目惚れしたことで、アザーズとしての本能を人間性が上回ったらしい。ティーン向けなのだから恋愛要素を挟むのは構わないのだが、一目惚れはあまりにも雑過ぎる。ここにドラマ性がないから、まったく感情移入ができない。異種族への恋なのだから、より丁寧な動機が必要だろう。ベンのほうもリンガーとのあれこれが描かれるが、こちらはティーン向けの物語では飽きるほど既視感を覚えるもの。面白くはない。

SF要素がダメなら恋愛要素で挽回、というわけにもいかず、SF映画としても恋愛映画としても褒められた出来ではない。

 

まとめ

どこかで見たことがある展開に、ご都合主義とお粗末な侵略者をミックスした作品。製作側はシリーズ化を予定していたのだろうが、この内容なら望み薄だろう。ちなみに、製作にはサム・ライミ版『スパイダーマン』でお馴染みにトビー・マグワイアが名を連ねている。彼が映画化権を共同で買ったらしいが、良い俳優が良い映画を作れるわけではないということだ。ベン・アフレックマット・デイモンってすげえな。