自分という病

主に映画の感想 たまに変なことも書きます。あらすじは長いです。

映画感想 ゴースト・オブ・マーズ

ゴースト・オブ・マーズ

  (原題:Ghosts of Mars)

2001年 98分 アメリ

評価 5点/10点満点中

 

 

春のジョン・カーペンター祭り!

評価は思い出補正込みです。

『ザ・ウォード』に続き、ジョン・カーペンター監督作品の本作。正直言って出来は悪い、ぎりぎりクソ映画である。人によっては『テリファイド』とかが面白く感じられる作品だと思う。しかし、いいのです。思い出は偉大です。

自分は本作を小学校高学年か中学生のころに一度だけ見た。当時から「内容ないよ」とは思っていたのだが、随所に現れるゴア描写や狂暴なKISSみたいな敵の造形が、大人ぶりたい幼心に響いた。当然、ジョン・カーペンターなんて名前も知るはずがなかった。題名も忘れるほどに思い出が風化したころ、『ハロウィン』を見てジョン・カーペンターを知り、彼のWikiに載っていたこれを見つけてようやく記憶の埃が払われたわけである。もっとも、手を伸ばすまでに三年以上かかってしまったが。

「カルト映画」というのは便利な言葉である。どんなクソ映画にもこの称号を与えることができて、これがつくとそれなりの箔というか尖がったものがあるように思える。本作もそんな「カルト映画」に属する、、、かもしれない。

火星を舞台にしたSFホラーアクション。セットはチープだしアクションは古いしストーリーはあってないようなもの。正直、人におすすめできる作品ではないが、ジョン・カーペンターのような巨匠でもこんな駄作を作るんだ、という大事なことを教えてくれる。時間を持て余している人は見てもいいのではないだろうか。

 

 

 

 

 

あらすじ(ネタバレなし)

2176年、人類は火星をテラフォーミングし植民していた。

ある日、火星の都市に自動運転の列車が帰ってくる。中を捜索すると、囚人護送を専門とする部隊の副隊長メラニー・バラード副隊長が発見される。さっそく、列車と彼女の部隊になにが起こったかを尋問する場が開かれる。メラニーはそこで、囚人の引き渡し場所だったシャイニング渓谷で起きた出来事を話す。

メラニーの部隊は「砂漠」の異名を持つ凶悪犯罪者のウィリアムズを護送することを目的として、シャイニング渓谷へ向かう。部隊のメンバーは隊長のヘレナ、副隊長のメラニー、ベテランのジェリコと新人のデスカンソとバシラの計五名。護送列車は18時にシャイニング渓谷に到着し、部隊はウィリアムズを引き渡されたあと、22時に戻ってくる列車にのる手筈を整えていた。

シャイニング渓谷に降りる一行だが、なぜか人の気配がない。不審に思ったヘレナは、自身は新人二人と人が集まる遊技場へ向かい、メラニージェリコにウィリアムズがいる刑務所へと向かわせる。自分を口説いてくるジェリコにうんざりしながらも、メラニーは彼と刑務所に入る。中には誰もいなかったが、モニターで独房に入っているウィリアムズを確認する。奥に入るためのロックを外すのに時間がかかると判断したメラニーは、一度外に出て他の建物を探索することにする。明かりが点いていた建物に入った二人は、針金と刃物で作られた奇妙なオブジェがぶら下がっているのを見つける。さらに探索を進めると、人間の千切れた腕を発見、ただちに応援を要請して外に出る。

出たところで鉢合わせしたデスカンソによると、遊技場は地獄らしい。二人が遊技場に入ると、首のない死体がいくつも逆さ吊りにされていた。事態の異常性を認めたヘレナは、すぐさま列車を呼び戻そうとするが、嵐のために連絡がつかない。一行は一度、刑務所へと向かうことにする。

ジェリコによって牢屋への道が開かれる。そこにいたのは三人の囚人と、ウィトロックという女性科学者だった。彼女は先日暴動が起きたドラッカーズから気球に乗ってここまで逃げてきたのだと言う。なぜ牢屋に逃げ込んだのかという質問に、彼女はここが一番安全だからと答える。

ウィリアムズと面会するメラニージェリコ。この街でなにが起こっているのか尋ねるが、ウィリアムズはなにも言わない。メラニーたちがみんなのところへ戻ると扉を叩く音がする。扉を開けると、この街の巡査が倒れこんできたのだが、彼女は自分の両手を閉じたり開いたりしてはそれを見つめるだけだった。

ヘレナとメラニーが外を巡回する。すると、車の中に刃物を持った男を見つける。男を取り押さえようと車の裏側に回ったヘレナは、背後を駆け抜ける人影に気が付きそちらを追いかける。男はヘレナに「来るな」と言って自らの首を切り自害する。やってきたジェリコに事情を説明すると、彼は隊長を探すと言う。メラニーは刑務所へと戻る。

すると、ウィリアムズは刃物を持ってバシラを人質に取っている。デスカンソが食事のために牢から出したという。バシラの代わりに人質を申し出たメラニーは、隙をついてウィリアムズの刃物を叩き落すが、彼に殴られ気絶する。目覚めたメラニーに、ウィリアムズはショットガンを持って病院へ逃げたとデスカンソが語る。

三人が病院へ向かうと、そこにも針金と刃物のオブジェがある。ウィリアムズを探すメラニーは患者らしき男に襲われるがウィリアムズに助けられる。直後、彼を襲った別の患者からメラニーはウィリアムズを助ける。再び牢屋に入ったウィリアムズは、自身の無実を訴える。街の異常性から無実は信じると答えたメラニーだが、護送の任務は果たすと言う。

一方、隊長を探していたジェリコは生首を持った人物を発見。その人物が生首を地面に突き立てた棒に刺す。ジェリコが生首に近づくと、その首はヘレナのものだった。丘の向こうから聞こえる音に気が付いたジェリコは、頂上から向こう側を見る。彼は自分の体に傷をつけて奇妙なメイクをした集団が、人々を次々に処刑しているの目撃する。

シャイニング渓谷にはなにが起きたのか? メラニーたちは狂人の集団から逃れられるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

メチャクチャが押し寄せてくる

本作を一言で表すならこうだ。まず、ストーリーがメチャクチャである。火星をテラフォーミングするという高度な文明がありながら、移動手段は線路を引いた列車。火星のテラフォーミングは84パーセントまで進んでいるらしいが、未来の通信技術をも妨害する嵐が吹いている。護送予定だった囚人(悪いやつだが実は無実)と結託して危機を乗り越えるというのは実に王道な展開ではあるものの、丁寧でもないから適当にどこかから拾ってきただけのプロットに思える。

さらに人々が狂暴化する原因、火星の先住民関係もツッコミどころが満載だ。彼らの目的は火星にやって来た侵略者を追い払うことらしいが、おそらく自ら封印を施してしまっている。もしウィトロックが封印を解かなかったら、彼らは永遠に大地の底に眠り、その上で人類がふんぞり返っていたかもしれない。実に受動的な奴らである。

彼らは赤い霧のようになって風に運ばれるらしいのだが、これもまた運任せだ。人類が築いた線路に沿ってやってくるとの説明もあったが、これは風に云々と矛盾する。ある程度は自分の意志で動けて、長距離は風に頼るしかないのか。なんにせよ、積極性がない奴らだ。

封印を解いた張本人であるウィトロックは、気球で逃げてきたらしいが、2176年の火星で気球を使うとは、もはやギャグの領域だ。

極めつけは最後、せっかく逃げ出したのに奴らを倒すために戻ると言い出すメラニー原子力発電所を爆破して核爆発を起こすと言うが、いや、起きんだろ。自分は軍事などには明るくないが、核爆発を起こすためには爆縮レンズなどその他もろもろが必要なはずだ。制御棒を取り出したところで放射能汚染が起こるだけで爆発するとは考えがたい。それとも未来の原発には自爆スイッチでもついているのか。

ウィトロックは宿主の肉体は死ぬけど、寄生している先住民は死ぬかわからないと言う。もっともである。宿主を殺せば先住民は出てきて他人に憑りつく。これは作中に何度も起きた現象であるから、核爆発でも先住民を殺せるかは不確定なわけだ。その不確定な希望にメラニーは命令だと周囲に高圧的に言い、結局生き残るのはメラニーとウィリアムズだけという惨事だ。映画的には最後に見せ場を作りたかったのだろうが、いくらなんでもメチャクチャな運びだ。結果的に、先住民は殺せなかったしね。あと原子力発電所が居住地域の真横にあるのはどうかと思う。簡単に爆発する原発があんなに近くにあるなんておかしいでしょ。

 

メチャクチャを楽しむ

本作にも良い点がないわけではない。アクションは古臭いとは言え、襲い掛かってくる大量の狂人たちをばったばったなぎ倒すシーンは面白い。仲間が意外と簡単に死んでいくのも、ホラー映画の巨匠カーペンターらしい。常に赤みがかった画面も火星の雰囲気が出ている。でもテラフォーミングがほとんど完了してるんですよね、というツッコミはいけない。また、セットのチープさをごまかすためだろ、とも言ってはいけない

なにより魅力的なのは、先住民に憑りつかれて狂人になった人間たちのビジュアルだろう。自分の体に傷をつけたり、巨大なピアスを開けていたり、『北斗の拳』や『マッドマックス』の雑魚よりも世紀末感が強い。なにより敵のリーダー格の見た目が強烈だ。パッケージでも中央を飾る彼は、KISSとマリリンマンソンを足してゴツくしたような見た目をしている。容姿に反してそれほど戦闘力は高くないが、インパクトには残るだろう。ただ、自分の思い出にあるほどの衝撃はなかった。なんだかもっと残忍でグロテスクだった記憶があったのだが、思い出補正だったようだ。

原発を爆破して核爆発を起こすとか、意味深に憑りつかれたウィトロックがそこでフェードアウトしたとか、人類に勝ち目無くねとか、そういった細かいところを見ずに、メチャクチャな本作を楽しもう。あと、ストーリーのテンポ自体は悪くない。

 

 

まとめ

クソ映画ですかと聞かれれば、ためらわずイエスと答える。けっして人におすすめできる映画ではないし、同じようなジャンルなら『バイオハザード』とか『ブレイド』のほうが圧倒的に面白い。クソ映画好きの人には、ジョン・カーペンターのクソ映画として見てもいいのではないだろうか。あと、ジェイソン・ステイサムが初々しい。