自分という病

主に映画の感想 たまに変なことも書きます。あらすじは長いです。

映画感想 デビルズ・トレイン

『デビルズ・トレイン』(原題:Howl)

2015年 89分 イギリス

評価 4.5点/10点満点中

 

 

邦題のつけ方にはいろいろな方法がある。原題が英語であるなら、それをカタカナ語にしたのが最近の主流のように思う。『天使にラブソングを・・・』(原題:Sister's act)のように秀逸な邦題もあれば、『バス男』(原題:Napoleon Dynamite)のように批判が多く寄せられて変更になったものも存在する(『バス男』という題名は『電車男』に便乗してつけられた)。また、『ゼロ・グラビティ』(原題:Gravity)のように映画の本質とは正反対の邦題も存在する。

本作の邦題は直訳すると『悪魔の列車』だが、本作に悪魔は出てこない。原題を直訳すると『遠吠え』となる。なぜこの作品が『デビルズ・トレイン』になったのかはまったくの謎だ。本作のあらすじをざっくりと言うなら、事故で止まった夜行列車に乗り合わせた乗員乗客が、彼らを襲う謎の怪物と戦うシチュエーションホラー。

悪魔はでてきません。

出来としてはインディーズ映画らしいクオリティ。ツッコミどころはあるものの、映画としての形をなしているぶん、ツッコミながら笑って見る映画にもなれていない。ある意味一番不幸な立ち位置にある映画ではないだろうか。

 

 

 

あらすじ(ネタバレなし)

鉄道会社に勤める車掌のジョーは、シフトを終えて帰り支度を始める。ロッカーに入っていた封筒を開くと、中身は昇進試験の不合格通知。気を落とすジョーのもとに、管理職になった同僚が、夜行列車のシフトを交代するように求めてくる。不承不承にジョーは承知する。

イーストボロー行きの夜行列車に乗ったジョーは、乗客の切符を確かめに客車へ移る。着替えた服をゴミ箱に突っ込む若者、乗車券を忘れた女、通話を止めない少女、老夫婦など、さまざまな乗客が乗り合わせている。車両を次々と移動するジョーは、車内販売をしているエレンを見つける。転職を考えている彼女は、今月中に稼げるだけ稼ぐつもりだと言う。彼女をご飯に誘おうとするジョーだが、やんわりと断られてしまう。

乗車券の点検を終えて車掌室でうとうとしていたジョーは、急ブレーキで目を覚ます。ついで車内が停電する。なにかに衝突したので急停止したと、運転手のアナウンスがはいる。客車に向かったジョーは、押し車を倒して商品を落としたエレンと、彼女を手伝う中年の男(エイドリアン)を見る。ジョーはエレンを手伝うが、彼女に言われて他の乗客の様子を見に行く。

運転手が車外に出て、雨が降るなか衝突物を確認する。運転手は、車輪に挟まった大きな鹿の死体を見つける。角を引っ張って引きずり出そうとする運転手は、不意に背後の森からなにかの気配を感じる。振り向いた運転手を、大きななにかが襲う。

ジョーは乗客たちに異常がないことを確かめると、運転席に向かう。しかしそこに運転手の姿はなく、ジョーは会社に電話して指示を仰ぐ。嵐によって各地でトラブルが発生しているらしく、社のチームが到着するには四時間かかると言われる。それを伝えると乗客たちは猛反発し、ジョーとエレンに非難を浴びせる。終着駅まで数マイル程度であるからと、車外に出て線路沿いに駅まで歩くことをエイドリアンが提案する。ジョーは規則違反で解雇されるからと反対したが、乗客たちに圧されてしぶしぶ車両のドアを開く。

固まって線路沿いを進む一同を、森のほうからなにかが窺う。茂みから聞こえた物音の正体を確かめるべく、ジョーとヘレンが茂みに近づく。無残に引き裂かれた運転手の死体を二人は見つける。二人が恐怖で固まっていると、オオカミの遠吠えが響く。急いで列車へと戻る一同だが、老夫婦だけが遅れてしまう。ジョーが待ったおかげで彼らは車内に戻ることができたが、夫人はドアに足を挟まれて、その足が引っ張られる。なんとか彼女の足を引きずり入れたが、足には噛まれたような深い傷がついている。

ジョーは再び無線で本社に連絡するが、無線は通じない。実家が整備工場だという乗客のビリーが電車の状態を確かめる。衝突によって燃料が漏れていて、動かすには燃料漏れを止めないといけないと言う。傷を負った夫人は、あれは獣じゃなかったと語る。

外にいるなにかはドアを揺さぶったりして、車内への侵入を試みる。全員が神経を張り詰めるなか、携帯の着信が鳴る。鳴っていた携帯は車内で通話していた少女のもので、母からの電話に彼女が出ると、窓が破られて伸びてきた毛むくじゃらの腕が彼女を屋根へと引き上げる。列車の屋根から悲鳴が聞こえて、窓には血が垂れる。

乗客たちに恐慌が広がるが、老夫婦の夫が彼らを一喝して、バリケードと武器を用意するように言う。乗客たちは彼の言葉に従い、窓やドアを塞いで武器を用意する。いっぽうで、怪我を負った夫人は血を吐く。その血の中には歯が混じっている。

怪物たちの正体は? 果たしてジョーたちは生き残ることができるのか? いつも通りの夜行列車が、怪物の狩場へと変わる。

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

ホラー映画のヒエラルキーにおいてエンジニアは頂点

『デビルズ・トレイン』という題名のくせに出てくるのは人狼である。しかも噛まれたら移っちゃうタイプの人狼だ。元が人間なためか、生け捕りにした獲物を使って他の獲物を吊るという知的プレイをかましてくる。結局、生き残ったのはエレンだけというシビアな結果に終わってしまった。エレンが人狼を駆逐するという展開もない。

インディーズのホラーのわりには、話もまとまっており、登場人物たちのキャラがブレるようなこともない。だからこそ、感想に書くのが困るくらいにパンチがない。

ホラー映画は低予算でも『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『パラノーマル・アクティビティ』のようにアイデアひとつで世界的なヒットを飛ばせるし、ネタ方面に振り切れたならば、『恐怖!キノコ男』のような話題作になることもできるのだが、この映画には両方ない。本当に書くことに困る。

初めは人生に倦んでいてデカダン一歩手前だった主人公が、最後にはエレンを守るために自らを犠牲にして人狼たちの前に立ちはだかる。実によくある展開だし、二人が問答している時間があるならさっさと一緒に逃げればよかったのではないだろうか、とくらいのツッコミしか思いつかない。

実業家のエイドリアンも、ゲスイ成り上がりのテンプレみたいなキャラクターで、取り立てて語るようなものでもない。

唯一目立ったキャラといえば、列車を直したビリーだろうか。まだ高校生の彼は、危険を顧みず列車を直し、機転を利かせて人狼たちの目を逃れ、追いつめられたジョーとエレンを救った。間違いなく作中最高のイケメンキャラであり、あっさり退場してしまったのが惜しいくらいである。しかし、ホラーな状況に陥ったらエンジニアはやっぱり強い。『Dead Space』でもそれは証明されている。

本当に、書くことがない。ので短いが感想は終わり。

 

 

まとめ

取り立てて語ることもない映画。けっして面白くないわけではないのだが、これを見るならやっぱり『新感染』を見たほうがいいんじゃないかなあ。