自分という病

主に映画の感想 たまに変なことも書きます。あらすじは長いです。

映画感想 禁断の惑星エグザビア

『禁断の惑星エグゼビア』

  (原題:Forbidden World)

1982年 77分 アメリ

評価 7点/10点満点中

 

 

B級である。原題も邦題も有名なSF映画『禁断の惑星』(原題:Forbidden Planet)のパロディだ。プロデューサーは、B級映画の皇帝ことロジャー・コーマン。コーマンは前年にも『ギャラクシー・オブ・テラー/恐怖の惑星』という似た路線の作品をプロデュースしており、そちらにはのちに『エルム街の悪夢』でフレディを演じるロバート・イングランドや、『ターミネーター』シリーズや『エイリアン2』、『タイタニック』に『アバター』という大ヒット作を監督したジェームズ・キャメロンが参加している。ちなみに、内容としては『ギャラクシー・オブ・テラー』のほうが『禁断の惑星』に似通っている。

本作の内容は、『エイリアン』よろしくなSFモンスターパニック。とある惑星で行われていた実験により生まれた生物を、トラブルシューターの主人公が相棒のロボット(可愛い)や、実験施設の面々とともに戦うという桃太郎よりわかりやすいストーリー。エロありグロありで真っ当なB級映画だ。尺も77分という素晴らしい長さで、コーマンプロデュースの名に恥じない出来だ。家族団らんで見られる作品ではないが、一人でこそこそ楽しむには良い作品だろう。ポスターも実に良い味をだしている。

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英語版Wikipediaより

ポスターに映っている怪物は出ません。

 

 

 

 

あらすじ(ネタバレなし)

トラブルシューターのマイクは、相棒のロボットであるサムにコールドスリープから起こされるやいなや、宇宙強盗団の襲撃を受ける。核融合砲を使って強盗団を殲滅したマイクは、サムから次の任務のことを聞かされる。任務はエグゼビアという惑星の実験施設で起きた事故の後始末だという。本来なら地球に帰れるはずだったマイクは深く落胆する。

ワープでエグゼビアに着いたマイクたちは、実験施設で所長のゴードン、彼の助手で遺伝子工学者のバーバラに迎えられる。さっそく事故現場に向かったマイクは、引き裂かれた動物の死体が無数に散らばった惨状を目撃する。遅れて細菌学者のカルがやって来て、職員たちは「検体20」という実験体が逃げ出して動物たちを引き裂いたのだと説明する。現在、遺伝子を自ら変異させることができる「検体20」は、実験室内にある孵化装置の中で繭を作っている。マイクは「検体20」を破壊することを提案するが、貴重な実験体を失いたくないゴードンは反対する。所長は職員のジミーを呼ぶと、彼に現場の片づけを任せ、一行は食事をとることにする。

職員のトレーシーにブライアン、警備係のアールを加えて、食事をとりながらこれからの方針を話し合う。話の中でゴードンは、プロトBという細菌について説明する。プロトBは自分の死骸も含むあらゆる物質を栄養源とすることができ、異常な繁殖力を持つのだという。さらには、他の生体組織に打ち込むことで、急速に増殖する。研究の目的は、藻の仲間にプロトBを打ち込み大量増殖させることで、食糧問題を解決することにある。プロトBをある生き物に打ち込んだ結果生まれたのが「検体20」らしいが、マイクがなんの動物かを尋ねてもゴードンや職員たちは答えない。また、アニーという死んだ職員の名前がでてきたが、職員たちは彼女についても口を堅く噤む。

実験室の片づけをしていたジミーは、「検体20」が孵化し始めていることに気が付き、ゴードンたちに連絡する。ゴードンが孵化装置を閉めようとしたとき、飛び出したタールのような「検体20」が彼の顔に張りつく。ゴードンたちが駆け付けると、「検体20」はすでに逃げており、頭に穴の開いたジミーが床に倒れている。全員がジミーは死んだと思ったが、彼は大脳を失いながらも生きており、カルが彼を医務室へと運ぶ。男性陣は実験室内で「検体20」を探す。しかし、医務室に運ばれたジミーの腹から、「検体20」が這い出してどこかへ行く。

夜になると捜索は打ち切られ、警備係のアール以外はそれぞれ自室に戻る。マイクも部屋をあてがわれるが、バーバラに誘われて彼女の部屋に入る。ジミーの恋人であったトレーシーは、彼と写った写真を見て涙を流す。マイクはバーバラと体を重ねる。通気ダクトに異常をみとめたアールは、単身で様子を見に行き、ロッカールームで彼は襲われる。医務室では肉の塊に変貌したジミーが不気味にうごめく。

「検体20」、アニー、実験施設に隠された秘密とは? 果たしてマイクは突然変異を繰り返す「検体20」を打ち破ることができるのか?

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

ポンコツロボットのサムちゃん

ツッコミどころはあるし不満点もあるが、冒頭に書いたように、本作はB級映画としては十分な出来である。お手本のような作品といってもいいだろう。あきらかに展開には不必要なエロがあるところも、B級らしい。グロテスクな描写に関してはかなり力を入れており、本物の動物の死体も使われたらしい。時代が時代だからゆるかったのだろうが、今だと完全にご法度だろう。

キャラクターに個性があるのもいいだろう。冷酷そうな見た目とヒロインっぽさを醸し出しながらも、平和主義者でそれゆえに死ぬバーバラ。殺されキャラのようでありながら、毎回かみひとえで危機を脱する異能生存体のトレーシー。サイコな科学者のようでありながら、作中一番の良心をもつカル。無駄死にのブライアン。だが、なによりも忘れてはならないのは、ロボットのサムだ。

宇宙服を着た人間にしか見えないがロボットと言い張るサムは、はっきり言ってポンコツである。まず、宇宙強盗団に襲われて対処できないから主人のマイクを起こす。基地について早々、口やかましいからと電源を切られる。高度なロボットの電源が照明みたいにポチポチ押せるのはどうかと思う。いざ怪物を倒すときになり電源を入れられると、「人間はこんなときだけ私の電源をいれるのですね」と皮肉を言うくせに、自らが撃ったレーザーが反射して自爆し、ブライアンに背負われ運ばれる。なぜレーザーが岩肌に反射するのかは謎だ。

ここまでポンコツが極まると可愛く見えてくるものだ。そんなサムも、最終決戦では怪物にモルヒネを打ち込み動きを鈍らせることに成功する。そのあと真っ二つになったけど。全編を通して意外と登場回数の少ないサムだが、キャラはものすごく立っている。動きが滑らか過ぎてロボットっぽさがないところも愛しいところである。スーツアクターのやる気がなさすぎだろう。R2D2を見習え。

いっぽうで、所長のゴードンや警備係のアールは性格から行動、結末までテンプレである。主人公のマイクに関しても、八十年代ハードボイルド主人公のテンプレだ。わかりやすいと言えばわかりやすいが。ゴードンやアールのキャラクターは物語を進むにあたり仕方ないとも思える。そのぶん、サムが輝いているので気にならない。

 

麻酔なし肝臓を取り出したら人は死ぬ

「検体20」はプロトBを使い人間を分裂を繰り返す単純たんぱく質に変えて、無限に増え続ける食糧にするという設定はよかった。食糧問題を解決するために生み出した実験体によって、減らない食料に変えるというのはなんとも皮肉である。

変異を繰り返すというわりには、「検体20」の見た目があまり変わらないのは残念。作中で見ることができたのは、タールのような形態とエイリアンの頭に触手がついたような形態の二つ。ポスターでは虫のような姿だが、これを見られることはない。というよりも、そもそも「検体20」の姿がはっきりと映ることはほとんどないのだが。

高速で増殖して変異し、他の生物を取り込む「検体20」を倒すために、カルは自分の癌に侵された肝臓を食わせることを思いつく。麻酔無しで素人のマイクによる開腹を望むカルの自己犠牲精神には涙がでるところだが、作中最大の笑いどころになっている。

カルのレバーを引きちぎったマイクが一言。

「やったぞ カル。取り出した」

マイクはカルの顔を見る。しかしカルは息を引き取っている。死んだカルを見て、マイクは目を張る。

麻酔なしで肝臓を取り出したら人は死ぬ。

麻酔があっても肝臓を取り出したら人は死ぬ。

なぜマイクは驚いたような表情をとっているのだろうか。腹に手をつっこんで肝臓を引きちぎれば人が死ぬのは必定である。

カルのレバーを直接つっこむというワイルドさは素敵。やっぱりレバーは危ないので気をつけよう。

最後に謎がひとつ。マイクが冷凍睡眠から目覚めるときと怪物を倒したときに、作中のシーンが脈絡もなく継ぎはぎされた映像が挟まれるの。最初は無限ループの伏線かとも思ったが、とくにそんなことはなかった。ただの謎演出のようだ。

 

 

まとめ

B級映画の皇帝プロデュースの見事なB級SFホラー作品。深夜に民放でやってそうな映画の雰囲気がたまらない人にはたまらない作品だろう。おっぱいがたくさんポロリするので、家族と見るのはおすすめできない。ひとりでこっそり見よう。