自分という病

主に映画の感想 たまに変なことも書きます。あらすじは長いです。

映画感想 ルール

『ルール』(原題:URBAN LEGEND)

1998年 99分 アメリ

評価6点/10点満点中

 

 

都市伝説をモチーフにしたホラー映画は多い。近年では『バイバイマン』や『スレンダーマン』、邦画でも『テケテケ』などその数は増えている。これはネットの影響によるものだろう。ネットの掲示板などに投稿された創作の怖い話が、ネットの速度を利用して急速に広まる。面白いことにこれらのネット都市伝説は、調べればすぐに創作だということがわかるのに、一定の人には事実として受け止められているのである。実際に、スレンダーマンが原因で少女が同級生を刺した事件まで発生している。

本作『ルール』も原題の通り都市伝説をモチーフにした映画だが、上記のネット都市伝説とは異なり、古い?タイプの都市伝説が基になっている。小説の内容が事実として語られるようになったり、実際の事件が脚色されてできあがったタイプの都市伝説だ。これらの都市伝説は、ネットの都市伝説とは異なり、超常的な力が登場しないこともありリアリティがある。都市伝説入門に『ルール』はどうでしょう。

 

 

 

 

 

あらすじ(導入部ネタバレ)

深夜、大学生のミッシェルは車を運転していた。ガス欠になった彼女はガソリンスタンドにはいる。挙動不審な店員を訝しみながらも、彼女はカードを渡して給油を頼む。すると店員はカード会社から電話がかかってきているからと、彼女を事務所へと案内する。ミッシェルは電話をとるが、どこにも繋がっていない。慌てた彼女は事務所を出ようとするが、店員が彼女を取り押さえようとする。隠し持っていた催涙スプレーを使って、なんとか車に乗り込んだ彼女は、急いで車に乗り込み走らせる。走り去る車に向かって店員は叫ぶ。

「後部座席に誰かが乗っている!」

店員から逃れて安心したミッシェルだったが、彼女の背後には人影が。そして斧が運転席の窓ガラスを突き破る。

 

ミッシェルと同じ大学に通うナタリーは、友人たちと大学にまつわるに恐ろしい話をしている。彼女たちが通うペンドルトン大学には、スタンレー寮という閉鎖された寮があり、かつて気が狂った教授が寮生を一人残して惨殺したのだという。

翌朝、ミッシェルの死が明らかになり、新聞部のポールがそれを記事にする。ポールは学校長からは注意を受け、友人であるナタリーからも死者への敬意がないと言われる。交流がないと言っていたミッシェルの死以降、なぜか落ち込むナタリー。そして、彼女の周囲の人々が、次々に殺されていく。そしてナタリーは、殺人鬼が有名な都市伝説になぞらえて起きていることに気が付く。

犯人はいったい誰なのか。なぜ都市伝説になぞらえて事件を起こすのか。そしてナタリーの過去と犯人が彼女を狙う理由は?

 

 

 

 

 

 

感想と解説(ネタバレあり)

冒頭からなかなかそそられる展開である。都市伝説を知っているという人なら、ミッシェルの死は有名な都市伝説の「後部座席の殺人鬼」とか呼ばれているものだとわかるだろう。もっとも有名なこの話のすじは、深夜に女性がドライブしていると後ろを走る車がやたらとパッシングしてくる。女性は車を止めて文句をいってやろうとすると、後ろの車のドライバーが降りてきて、こう言う。「後部座席にナイフを持っていた男がいた!」

ミッシェルのはこれと同じくらい有名なガソリンスタンドパターンである。

ほかにも出てきた都市伝説を紹介(抜けもあるかも)

ナタリーとブレンダがスタンレー寮の前で出していた「流血のメアリー」は「ブラッディ・メアリー」という名前のほうが有名だろう。鏡に向かって「ブラッディ・メアリー」と繰り返し言えば、鏡に映った霊が未来を見せてくれる。だいたいろくな未来じゃない。

デイモンの殺され方は作中で言われていた通り、森の中で車に乗っていたカップル。男のほうが用を足しに外に出る。しばらくすると女はなにかが屋根をする音が聞こえる。たしかめると、男が木に吊られていた。音は男の足が屋根を擦っていた音だった。これは殺人鬼が脱獄囚パターンもあるらしい。

ルームメイトのトッシュのは、そのまま「ルームメイトの死」。これは殺されるのは兄弟姉妹のパターンのほうが日本では有名か。筋は作中のと同じだ。

パーティーを主催してたパーカーの殺され方は、作中でウェクスラー教授が実験をしていたはじける飴と炭酸飲料。

すべての発端となった「ハイビームの儀式」については、作中通りギャングが行っていたと噂されたもの。わざとライトを消して車を走らせているギャングが、ハイビームで注意してきた対向車を追いかけて、最後は相手の運転手を殺すという筋だが、これは90年代にアメリカで急速に広まったものらしい。日本では聞いたことがないが、当時は日本でも流行ったのだろうか。

校長とラジオDJのサーシャの殺され方についてはわからなかった。校長はともかくサーシャはとくに元ネタはなさそうではある。

腎臓泥棒は、美女に誘惑された男がホテルに入ると睡眠薬を盛られて寝てしまう。起きた男の腹には傷跡があり、そこから腎臓が摘出されていたというものだ。

以上、都市伝説についての簡単な解説。

 

作品の雰囲気は『スクリーム』に近いだろうか。『スクリーム』は様々なホラー映画をパロディとした傑作ホラー映画だ。未視聴の人はぜひ一度。

犯人の目星が終盤までわからないのは良い点。といっても見ているとポールとブレンダの二択なるだろうが。それだけに、最終盤にあからさまにポールが怪しい証拠がポンポンでてくるのは逆効果だった。

都市伝説になぞらえた殺人方法に関しても、トッシュあたりまでは演出や流れも細かくできていた。自分が知っている都市伝説で登場人物が殺されると、「あ、これ見たことある」と進研ゼミの漫画の主人公気分を味わえるのもいい。とくに導入部は都市伝説そのままだからこそ際立った入りだった。またパーカーを誘導するために、有名な電子レンジで乾かされた猫(作中では犬)の都市伝説を使ったのはトリッキーだった。

それが途中から少し雑になり始めたのは残念。とくにサーシャは終盤の死亡枠の処理タイムとはいえ、もう少し丁寧にしてほしかった。

女性のブレンダがどうやって人にばれずに死体を運んだりしたのか、どうやって男のデイモンを吊るしたのか、などの疑問はあるが、ブレンダはどちらかというと「ジェイソン」や「ブギーマンことマイケル・マイヤーズ」と同じ人間やめてるタイプなので、そうした疑問はナンセンスだろう。

全体としては竜頭蛇尾の作品。殺し方やストーリーに光るところはあるものの、後半に連れて雑になっていく感じがいなめない。まあ、前半のクオリティを保てていても、出来としては『スクリーム』よりだいぶ劣るだろう。『スクリーム』が好きなら見てもよいかもしれない。またこの映画を見て、都市伝説の世界に入るのもいいだろう。

 

余談

こういう映画で主役級を演じた俳優は、のちのキャリアはパッとしないことが多いが、ポール役のジャレッド・レトは、『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー賞ゴールデングローブ賞を受賞している。そのまえから『ファイト・クラブ』や『パニック・ルーム』に出演し、最近では『スーサイド・スクワッド』、『ブレードランナー2049』などの大作映画にも顔を見せている。体を壊すほどの役作りをする俳優で、すでに四十半ばだがこれからが楽しみな俳優だ。『ルール』ではさわやかな青年風だが、最近はヒッピーのリーダーみたいない見た目になっている。