自分という病

主に映画の感想 たまに変なことも書きます。あらすじは長いです。

映画感想 地獄の変異

地獄の変異』(原題:THE CAVE)

2005年 アメリカ/ドイツ 97分

評価 6点/10点満点中

 

 

未知の世界といえば宇宙だろう。あまりに広大すぎる宇宙には、ほかの知的生命体や、人類の常識から外れた環境をもつ惑星など、その広さと同じくらいに想像力が膨らむものだ。

また深海も未知の世界だ。同じ地球にあるにもかかわらず、探索してわかっている部分は火星と同じともいう。たとえ月には着陸できても、水圧を克服するのは至難ではない。

日夜多くの専門家が汗水たらし、少しずつこれらの領域を開拓して、私たちに驚きと発見を届けてくれるのである。

宇宙と深海に隠れがちだが、洞窟も未知の世界だ。宇宙のような真空でもなければ、水圧のような力があるわけではない。だが宇宙と深海とは正反対の狭く閉じられた空間には、また別の驚異が眠っている。そこには地上には存在しない地形や鉱物があり、独自の生態系をもつ生物がいる。もしかしたらそこには、ホラー映画の怪物のような生物も潜んでいるかもしれない。そんな映画が『地獄の変異』。

 

 

 

 

 

あらすじ(ややネタバレ)

冷戦時代のルーマニアカルパチア山脈。屈強な男たちが山奥に建つ捨てられた古い教会を訪れる。教会の地下には大量の人骨に、翼をもった化け物が描かれたレリーフ。そして彼らの目的は地下のさらに下にある洞窟にあるらしい。悪魔のような怪物を描いたタイルを爆弾で破った彼らだったが、爆発の衝撃で教会が崩壊し洞窟に転落。そのまま生き埋めとなってしまう。

それから30年後、ニコライ博士率いる研究チームは、教会のがれきの下に広大な洞窟を発見する。博士は洞窟の探索のため、アメリカのケイヴダイヴチームを呼び寄せる。彼らは、経験豊富で冷静な判断を下せるリーダーのジャックを筆頭に、ジャックの弟であり無鉄砲だが高い実力をもつタイラー、優秀な副リーダーのトップなど、幾多もの洞窟を制してきた計六人からなる精鋭チームである。

ニコライ博士により「タイタン・ホール」と名付けられた洞窟は、かつて住み着いていた悪魔とテンプル騎士団が戦ったという伝説がある。悪魔に敗れた騎士団は、悪魔を封じるために教会を建てたという。

ダイヴチームにニコライ博士、博士の助手のキャスリンと撮影係のアレックスの計九名で、「タイタン・ホール」へのダイヴを敢行する。

入り口の広い空間を始点にした一同は、次の拠点を探すためにダイヴチームの一人ブリッグスを偵察に送り出す。地下川を数マイル進んだところに拠点になるスペースを見つけたブリッグスはさらに洞窟内のモグラも発見する。突然ブリッグスとの通信が途絶えるが、ケーブルが切れただけだと落ち着き払った面々は、二組に分かれてダイヴする。テイラーはチームメンバーのストロードとともにケーブルの修理に、残りの面々はブリッグスが見つけたスペースへと向かう。

拠点予定地にたどり着いた面々にブリッグスは古い衣服を見せ、自分たちがこの洞窟に潜った最初の人間ではないことを伝える。一方でケーブルの修理に向かったタイラーは、千切れたケーブルを見てなにものかが噛み千切ったことに気が付く。彼から少し離れていたストロードが謎の生き物に襲われる。タイラーが助けに向かうも、ストロードのボンベが爆発して洞窟が崩落。ストロードは巻き込まれ死亡し、タイラーは衝撃でほかのメンバーのもとへと流される。

一行は拠点で救助を待つか、先に進んで出口を探すかに意見がわれて口論を始める。これほど深い場所だと救助が来る前に食料が尽きると判断したジャックの決定で一行は先に進むことに。ジャックとトップが洞窟の先を偵察に向かう。彼らが戻ってくるのを待つ間、キャスリンは洞窟内のあらゆる生き物の体内に同じ寄生生物がいることを発見する。

未知の洞窟に閉じ込められた一行に、恐ろしい怪物が襲い掛かる。はたして彼らは洞窟から出られるのだろうか? そして怪物の正体とは?

 

 

 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

地獄の変異』っていうタイトルはどうかと思うんだ。

見る前はてっきり、洞窟の奥に地獄の扉があってそこから悪魔が飛び出てうわーっ、という感じの映画だと思っていた。原題のTHE CAVEでをカタカナにして『ケーヴ』とかでもよかったんじゃないだろうか。それともケープぽくてダメなんだろうか。

この映画は同年公開の『ディセント』とコンセプトが似ている。『ディセント』は、仲良し女子グループが探検にでた洞窟に怪物がいて襲われるという、簡単なあらすじならほとんど『地獄の変異』と同じ作品。ただ細かい内容は両作で結構異なっている。

まず『ディセント』は主人公たちがアマチュアレベルの装備しかもたないのに対して、『地獄の変異』は主要人物は洞窟探索のプロたちであり、装備も経験も豊富である。

また、『ディセント』の洞窟は狭く暗いばかりだったが、『地獄の変異』のそれは地下川に地底湖、序盤では美しい鍾乳洞など、見る分にも美しかったりする。

なによりも『ディセント』は女同士のドロドロとした争いや主人公が見る幻覚など、怪物以外の怖さもあるのだが、『地獄の変異』はわりと直球なモンスターホラー。『ディセント』は結末も含めて賛否両論があると思うので、モンスターホラーを見たい人はに『地獄の変異』がいいかもしれない。賛否両論あるということは話題性があるということなので、本作は『ディセント』の影に隠れがちだ。

内容の評価をするならば、まとまってはいるが新鮮味にも斬新さにも欠けるといったところ。むしろオーソドックスな展開にまとまりすぎて人によってはつまらないだろう。最後のほうにはホラー映画というよりはインディ・ジョーンズみたいになったのもマイナス評価につながる。

怪物の正体が寄生されて変異した人間というのも、寄生生物がでてきた時点でよめる設定だし、最後の最後にキャスリンが寄生生物に取りつかれていたというのも別に衝撃のラストでもなんでもない。お決まりすぎて展開が読めてしまうし、せっかく洞窟というシチュエーションなのに、後半は明るい場面が多かったのもせっかくの設定をいかせていない。それと、危険が伴うケイヴダイヴの精鋭チームが、わりと簡単に分裂しすぎじゃないだろうか。たしかにホラーでの登場人物たちの衝突はお約束だが、本作の設定ならむしろ、危機的状況にあっても知恵と経験で乗り切る主人公たちが見たかった。

なんだか酷評しているようだが、見どころもある。

主人公の兄ジャックが中盤で寄生されていることが発覚する。顔が青白くなり瞳にも異変が現れた彼は、正気を失って怪物どもの仲間になってしまっているのでは、と疑われる。彼の強引な決定や強くなるメンバーへの当たりなどもその疑いに拍車をかけているのだが、結局のところ彼はまったく正気を失ってはおらず、豹変したように見える態度も分裂するメンバーをまとめてと強引になってしまっていただけだった。実際、ジャックの指示や決定はつねに的確で、彼の指示に従っていれば死ななくて済んだメンバーも多い。そして最後には捨て身の特攻。視聴者としてもジャックを訝しむだろうから、いい意味でも裏切りになるだろう。

またアクション要素はけっこうレベルが高い。ホラーとしては微妙だが、『バイオハザード』などのホラーアクションに近い作品として鑑賞すれば楽しめるだろう。とくにダイヴチームの紅一点チャーリーが怪物と繰り広げる格闘はシンプルに楽しめる。

 

まとめ

総評としてはきれいにまとまりすぎた映画といったところ。うがったホラーを求めるのでなければ、大ハズレではないし意外とグロテスクなシーンも少ないのでカップルで見ても楽しめるかもしれない。まあ、いまなら素直に『新感染』みればいいと思うよ。