自分という病

主に映画の感想 たまに変なことも書きます。あらすじは長いです。

映画感想 ネイビーシールズVSエイリアン

ネイビーシールズVSエイリアン』

(原題:Alien Warfare)

2019年 88分 アメリ

評価 2点/10点満点中

 

 

タイトルからわかる通り、本作はクソ映画である。邦題も大概おかしいが、現代も直訳すれば『宇宙人戦争』と制作人のやる気のなさがうかがえる。名は体を表すと言うが、内容はタイトルの通り、海軍の特殊部隊ネイビーシールズとエイリアンの戦いを描いたものだ。クオリティ的には『プレデター』を文化祭で再現したレベルである。

映画としてはゼロ点なのだが、瞬間的な面白さが作中に存在するので、その面白さで加点して2点。面白いといっても、『メタルマン』のように鑑賞中ずっと笑えるクソ映画ではないので、注意してほしい。見るなら相当な覚悟が必要だと思う。

 

 

 

あらすじ(ネタバレなし)

ネイビーシールズ隊員のクリスは、自宅で日々を過ごしている。八ヵ月前に彼の所属している部隊は、テロ組織からの人質奪還任務に失敗して、解散を命じられていた。

クリスのもとに上官から電話がくる。翌日の十三時に、部隊のメンバーとともに作戦指令室に来いと上官は言う。クリスは戸惑いながらも了承する。

翌日、クリスは射撃場で働く兄マイクを訪ねる。人質奪還任務の失敗は、マイクの先走った行動が原因だった。そのことで二人は軽く口論になり、マイクは行かないと言うが、クリスは命令だからと釘を刺す。

指令室に着いたクリスは、技術担当のソープ、衛生兵のジョーンジーと久々の再会を果たす。上官とCIAの捜査官二人が現れてすぐにマイクもやってくる。捜査官たちは彼らに悪態をつくが、かつて大統領の娘を救出したクリスらは、大統領からの信任が厚く、今回も大統領からの指名で選ばれたらしい。

クリスたちに与えられた任務は、コーカサスのバルトビアという場所にある極秘基地の調査と、ある物体の回収だと告げられる。なんでもこの基地とは12時間以上連絡が取れず、さらに衛星の映像から、わずか一分の間に基地にいた百人の人間が消失した事実が判明したと言う。基地の詳細も回収する物体も教えられないことに不信感を抱く面々だが、任務ということで承諾する。

基地に近づいたクリスたちは、人の気配どころか鳥の声すらしないことに気づく。正面から基地に侵入した部隊は、内部に交戦の様子がないことに驚く。クリスとマイク、ソープとジョーンジーの二組に別れて内部を探索する。彼らはいたるところに、小さく積みあがった灰の山があることに気が付く。しばらく探索を続けていると、ソープたちは未知の言語が書かれたホワイトボードを、クリスたちは防護服を着て食糧庫を荒らす不審者を発見する。クリスとマイクが不審者を見失ったが、ソープたちが確保していた。防護服から出てきたのは女で、名前をイザベラといい、この基地で土壌の研究をしていたと語る。怯える彼女を諭したクリスは、基地から人を消した原因のもとへと案内させる。彼女とともに向かったのは地下のラボで、クリスたちは浮遊する黒い多角形の物体を見る。イザベラ曰く、この物体は宇宙由来で「デバイス」と呼ばれていたと言う。さらに彼女は人々が消えた原因を語る。

その日、突如CIAから退去を命じられた研究員たちは、荷造りをしていた。イザベラがファラデー室という電磁波の侵入を防ぐ部屋で作業をしていると、謎の男たちが「デバイス」にレーザーを当てると、謎の電磁波が放出されて、それを浴びたものはたちまち灰になった。彼女はファラデー室にいたから助かった。以上が基地に起こったすべてだとイザベラは言う。

思わぬ真実にうろたえるメンバーだが、とりあえず任務は完了したので外部との連絡を取ろうとすると、基地には機密保持のためジャマ―があり通信はできないとイザベラに指摘される。クリスはソープを屋上へ向かわせて、通信手段の確保を命じる。屋上に向かったソープがジャマ―を解除すると、「デバイス」から未知の言語が浮かび上がる。イザベラも初めてだという反応に驚き、クリスたちは警戒する。すると空からなにかが基地に接近し、それを見たソープは怯えを隠せずにいる。外にでたクリスとマイクは、自分たちが使っていたドローンが壊されているのを発見する。ドローンを調査しようとするクリスたちに、青い炎が襲い掛かる。間一髪で逃れたクリスたちのまえに、「デバイス」の主たちが現れる。

 

 

 

 

 

感想(ネタバレあり)

凝を怠るな

この映画、まず宇宙から隕石が飛来するシーンから始まるのだが、このCGのクオリティが『ビーストウォーズ』を彷彿とさせるものだ。『ビーストウォーズ』は20年以上前の作品であり、当時としてはとても質の高いCGアニメーションだった。本作は2019年公開である。わずか数分のCGが、映像制作初心者が作ったような出来なのである。この時点で、自分は本作に対して凝を発動した。

少ししてこの凝は解くことになる。というのも、ここから20分くらいは、まだ見られるシーンが続く。とくに人質奪還作戦の部分は、派手さがなく地味なことがかえって特殊部隊らしさをだしていたと思う。ただし面白いわけではない。

雲行きが再び怪しくなるのは基地に着いてからだ。交戦の形跡もなく人が消えたという設定は、大道具や小道具を作る必要がなく予算に優しい。エキストラ代も浮かすことができる。探索するクリスたちが見つける灰の山だが、どうみても盛り塩である。どういう電磁波が出たら、人体が盛り塩サイズの灰の山になるのだろう?

「デバイス」の見た目はまだマシだった。そこで少し安心したところに、本作最大の爆弾が落とされる。そう、宇宙人の襲来だ。

 

f:id:KeiMiharA:20190425085839p:plain

 (C)2019,Actionhouse Pictures, Hollywood Media Bridge, Shadow Vale Productions

 

こんなん笑うわ。

段ボールのような質感のアーマー。目の部分はおそらくメッシュ。さらに、

 

f:id:KeiMiharA:20190425090823p:plain

 (C)2019,Actionhouse Pictures, Hollywood Media Bridge, Shadow Vale Productions

 

衣装が剥げてますよ。

もう爆笑である。それまで退屈で思わず真顔で見ていたのが、一気に破顔した。ここの面白さは『プレデター』級だ。

ここから宇宙人と熾烈な戦いが繰り広げられるのかと思いきや、そうでもない。クリスたちは基地に立てこもり、宇宙人たちは外でもたもた。かと思いきや内側にワープしてきて肉弾戦を繰り広げる。Warfare(戦争)はどこにいったのか。

 

 

無駄な時間を生み出すための無駄な設定と無駄な展開

本作の主要人物は五人。主人公のクリスとその兄マイク、衛生兵のジョーンジーに技術兵のソープ、最後に研究員のイザベラだ。

まずクリスとソープにはそれぞれ妻がいて、クリスには子どももいるらしいことが序盤の会話からわかるが、当然妻子は登場しない。さらにソープは妻と仲たがいしているらしいが、そちらも序盤の会話以降なかったことになっている。

この二人はことあるごとに喧嘩をする。優柔不断だが隊の秩序のためにリーダーらしく振舞おうとするクリスに対して、弟がリーダーということと自らの短気な性格、そして持ち前のリーダーシップを持つマイクは些細なことで衝突する。おもにクリスが「リーダーは俺」と言い、それに対してマイクが「ちゃんとやれや」と返すパターンだ。そんな二人だが、後半に特別な理由なく急に和解して、マイクがリーダーとしてクリスをたてる。ぶっちゃけこの二人が一番いらない子たちである。

衛生兵のジョーンジーは、よくいる陽気で筋肉馬鹿な黒人という見た目だが、衛生兵であるし特殊部隊の隊員なので頭も良いという一見個性的なキャラだが、彼の衛生兵としての活躍は、学校の健康診断とか保健室での応急処置レベル。衛生兵という設定は必要だったのだろうか。おまけに欲しかったミキサーが壊されたという理由だけで激怒して作戦を放棄、敵に突っ込むという、世界一過酷な訓練をこなしたネイビーシールズ隊員とは思えない行動を起こす。それが結果として宇宙人に対する切り札を見つけることになるのだが、特殊部隊の隊員としてはいかがなものか。ただ、彼とソープの掛け合いや発言はそれなりに笑えるものがあり、なにより腕に「敬意」と漢字のタトゥーが入っているので許そう。

技術兵のソープが一番キャラがたっている。彼は写真で見た理想の女性を求めるあまりいまだに童貞で、すぐにうんちくを語りだす空気の読めない系のキャラだ。前半はそれがうまく活用されていたし、天然ボケなソープとジョーンジーの辛辣なツッコミが面白くもあった。技術兵としての活躍は基地のジャマ―を解除したくらいで、むしろこれが宇宙人を呼んでしまったことを考えればマイナスだろうか。おまけに敵に近いロビーにある電話を直すときには、イザベラとともに待機を命じられるなど、後半は個性が消えていっている。これに関してはクリスが悪い。

部隊の個性に関しては、クリスとマイクはうっとおしいだけだし、ジョーンジーはキャラとしては面白いが特殊部隊には合っていない。ソープはせっかくの個性が消えるという残念なことになる。また、彼らの会話は基本的に戦争映画特有の寒い掛け合いであり、ソープとジョーンジーの会話も面白いのは一部だけだ。

イザベラは本作のデウス・エクス・マキナだ。電気を遮断する謎のスーツをドラえもんのごとく持ってきたり、宇宙人がフィボナッチ数列を使うという情報だけから、「デバイス」を起動してみせたりと、話を進めるためのキャラである。一応、アメリカ人でない彼女は、取り乱すと母国語で話す癖があるのだが、いらない設定である。というか、アメリカの極秘施設で外国人を雇うのは機密保持の観点からどうなのかと思う。

宇宙人に関しては先のスーツのことも含めてツッコミどころしかない。まず彼らの戦闘力だが、防御面に関しては謎のバリアにより銃はまったく効かない。さらにワープもできる。だが彼らはほとんど攻撃を行わない。無双シリーズの一般兵NPCの半分も攻撃しない。後半なんかは棒立ちである。立派な銃もほとんど使わない。そしてノーコンである。彼らのエネルギー銃は一度もクリスたちに当たらない。肉弾戦もするのだが、そちらに関しては生身の人間と同レベルである。たしかにクリスたちは特殊部隊の隊員だが、宇宙人たちも超文明の訓練を受けた兵士である。それが人間とどっこいどっこいなのはやめてほしい。ていうか文明の利器を使ってほしい。

宇宙人の最大の特徴にして弱点。それは彼らが電気見ているということである。どういうことかと言うと、あらゆる生物が発する微弱な電気を感知しているのだ。作中ではサメのロレンチーニ器官が引き合いに出されていた。よく見れば、彼らのスーツもサメっぽい。

つまりこの映画はサメ映画である!

ならこのクオリティも納得だ。

彼らは生物の微弱な電気を感知できる代わりに、強力な電気の放出は感覚器官への負担となり、頭痛などの変調を起こす。どれくらい電気に弱いかというと、家電製品がショートしたときに出る電気や、施設の発電機が点くだけでも大ダメージである。彼らは蒸気機関でも使っているのだろうか? どうやって恒星間飛行が可能な文明を築いたのかが非常に気になる。というか、「デバイス」はおそらく防御反応として電磁波を発していたのだが、自分たちが一番のダメージを食らうのではないか。このあたりの設定はガバガバであるが、たくさんの笑いを届けてくれる。

「デバイス」の正体が宇宙人の入った脱出ポットで、宇宙人たちは仲間を取り戻しに来ただけ、というのは良かったと思う。そして最後には誰も傷つかない優しい世界だ。基地の人々は百人ほど死んだけど。

 

 

まとめ

この手の作品には珍しく、双方被害者なし(「デバイス」により消えた百人はコラテラルダメージでノーカン)で終わる作品だ。自分は途中から笑って見ていたが、クソ映画に慣れていない人にとっては苦痛の一本でしかないだろう。笑えるといっても、宇宙人のスーツ以外は頑張って笑えるところを探してた感じだし。

まあ、おススメできる作品ではないよね。